連覇か、初優勝か。お互いに手の届きそうな目標を目の前にすれば、その争いはおのずと白熱したものになるだろう。最後までもつれる……もしかすると延長戦もあるかもしれない――そう思われていた「SoftBank ウインターカップ2025 令和 7 年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子決勝戦は、福岡大学附属大濠 (福岡②) が東山 (京都①) を 97-71 と圧倒し、2 年連続 5 回目のウインターカップ制覇を成し遂げました。同校としては初の、ウインターカップの男子としては 7 校目の大会連覇達成です。

　ゲームキャプテンの #13 榎木璃旺選手はその勝因のひとつとして、最上級生である 3 年生がひとつにまとまったことを挙げます。「U18日清食品トップリーグ」の最中には 3 年生がゲームから外される「荒療治 (片峯聡太コーチ)」もあったと言います。しかしそれが 3 年生をひとつにし、ウインターカップでも大きな推進力になったと認めます。

「ウインターカップは 1 試合 1 試合が本当に厳しくて、どこで負けてもおかしくない試合が続いていました。悪い時間帯が続く中でも 3 年生を中心に声掛けをして、絶対に崩れないようにすることをゲームキャプテンとして心がけていました。最後まで試合に絡むメンバーがそれぞれの役割、やるべきことを遂行できたことが日本一につながったと思っています」

　高校バスケットの 1 年を締めくくるウインターカップは 3 年生にとって集大成の大会でもあります。それだけに 3 年生が力を発揮できなければ、チームの目標も勝ち取れません。榎木選手ら福岡大学附属大濠の 3 年生たちがそれをしっかりと表現したからこそ、大会連覇という結果を残すことができたのです。

　片峯コーチは、ウインターカップを連覇することの難しさについて、こう言及します。

「(優勝するまでに) シードでなければ 6 試合、シードだとしても 5 試合、連戦であるところはやはりきついところです。たかが 1 日 1 試合と思われるかもしれませんが、特に今年の我々としてはインサイドのところでサイズもパワーも劣る場面があったので、コンディションをしっかりと保ちながら、最終的にパフォーマンスを上げていくことが非常に難しいところです。(U18日清食品) トップリーグとは、その戦い方、臨み方、勝ち方が違うなというところが難しい点だと思います」

　トーナメント方式のウインターカップを勝ち抜くことの難しさをそう言及しながら、一方でリーグ戦方式の「U18日清食品トップリーグ」でチームを作れたことが、今回の連覇につながったとも言います。

「インターハイを経て、トップリーグでは少し多めに選手を起用することを意識しました。インターハイのときには大体 8～9 名で一生懸命回してたんですけど、今大会は主に11名でローテーションしてましたので、そういった意味でタイムシェアを上手にできたことが今回の勝因だと思います。特に準決勝、決勝の大一番で選手たちが高いパフォーマンスを発揮できたところは、連覇の大きな要因になっているんじゃないかと思います」

　決勝戦で 6 本の 3 ポイントシュートを沈めた榎木選手や、エースの #14 本田蕗以選手、スーパールーキーの #23 白谷柱誠ジャック選手らに注目が集まり、実際、彼らは今日の決勝戦でも二桁の得点を挙げています。しかし #7 村上敬之丞選手と #8 サントス マトエルハジメ選手もまた、ベンチスタートながら 2 桁の得点を挙げています。彼らだけでなく、ベンチスタートの選手が、誰が出ても強度の下がらなかったところに福岡大学附属大濠の連覇の鍵がありました。

　連覇はこれで終わりません。2 連覇の後に彼らが目指すのは――いや、彼らだけが目指せるのは大会 3 連覇です。3 連覇はこれまで 3 校――県立能代工業 (秋田)、洛南 (京都)、明成 (宮城 / 現仙台大学附属明成) しか成し遂げていません。白谷選手は支えてくれた 3 年生に感謝を示しつつ、こう続けます。

「この大きな存在 (3 年生) が抜けてからも、下級生である自分たちが自分たちのやるべきことをして、目標を達成するために今後もっと努力が必要だと思うので、やっぱり連覇で満足せず、高みを目指して今後も頑張っていこうと思っています」

　福岡大学附属大濠の挑戦は、代が変わっても続きます。それは同時に、東山をはじめとする全国の高校生たちの新たな挑戦でもあります。2025年度のウインターカップの試合終了のブザーは、2026年度のウインターカップに向けた始まりの合図です。来年の今日、誰がコートの上で笑っているのか。早くも楽しみです。

 
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【男子大会最終結果】
優　 勝：福岡大学附属大濠高等学校 (福岡②)　　※2 大会連続 5 度目
第2位： 東山高等学校 (京都①)
第3位： 鳥取城北高等学校 (鳥取①) / 福岡第一高等学校 (福岡①)

【男子大会ベスト5】
吉岡　陽　(よしおか・はる / 福岡大学附大濠 #6　3年)
本田蕗以 (ほんだ・ろい / 福岡大学附大濠 #14　2年)
白谷柱誠ジャック (しらたに・ちゅそんじゃっく / 福岡大学附大濠 #23　1年)
佐藤　凪 (さとう・なぎ / 東山 #5　3年)
中村颯斗　(なかむら・かいと / 東山 #8　2年)

【男子連続出場表彰】　　
〇10年連続出場
福岡第一高等学校 (福岡) / 九州学院高等学校 (熊本)