【現地レポート⑳】大阪薫英女学院、悲願達成! そして、その先へ――
2025年12月28日
「悲願」という言葉を WEB の辞書で調べてみると、「どうしても成し遂げようと心の底から念じている大きな願い」とあります。
「SoftBank ウインターカップ2025 令和 7 年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子決勝戦は、桜花学園 (愛知①) が勝っても、大阪薫英女学院 (大阪) が勝っても、どちらも「悲願」の達成となるゲームでした。前者であれば、4 年ぶり25回目ではあるものの、井上眞一・前コーチを亡くした最初の冬の優勝であり、後者であれば、同校を全国屈指の強豪に育て上げた長渡俊一・前コーチでさえ成し遂げることができなかった初優勝を遂げることになります。つまりお互いに高校バスケット界の “ 名将 ” と呼ばれた前任者がいて、その後を受け継いだコーチたちが2025年のウインターカップの頂点を争っていたわけです。

果たして、大阪薫英女学院が桜花学園を逆転で下して、ウインターカップ初優勝を飾りました。チームを率いて11年目の安藤香織コーチは勝因として、今大会のテーマに掲げたことを選手たちが体現してくれたと言います。
「(これまでに) たくさんのゲームを経験させていただいたところで、やるべきことをきっちりやる――結果よりも今何をするべきか、このメンバーで何をするのか、相手に留学生がいるのかいないのか、誰がエースで、どう戦うのか。そうした過程の部分を大事にしてきました。チームに力があるかないかというよりは、しっかりとゲームプランどおりにやろうということに集中してきたんです。私たちは日本一になったことがないので、100%の力を出しても日本一になれるとは思ってなかったですし、ウインターカップの試合の中で100%、110%、120%というふうに『前日を超えていく』ことをテーマにしていたので、それをしっかり選手たちが体現してくれたかなと思っています」
土浦日本大学 (茨城)、県立湯沢湘北 (秋田)、日本航空北海道 (北海道)、倉敷翠松 (岡山)、京都精華学園 (京都①)、そして桜花学園。1 回戦から決勝戦まで、どこも気の抜けない試合が続くなか、大阪薫英女学院はひとつずつ、そのステップを踏みしめて勝ち上がってきました。それを最後の決勝戦でも同じようにステップアップして、初の栄冠を手にしたというわけです。

戦略・戦術面でいえば、後半、ゾーンディフェンスを敷くことで、前半で後手に回っていたリバウンドを修正します。逆転した第 4 クォーターの10分だけを見ると、桜花学園の 8 本に対して、大阪薫英女学院は18本と、10本も多くリバウンドを取っています。
それについて、チームトップの13リバウンド (と30得点) をあげた三輪美良々選手は言います。
「ミーティングのときに、桜花学園さんが勝ち続けているゲームはオフェンスリバウンドがかなり多いと安藤コーチに言われていて、そこを徹底しない限り、自分たちが勝てることはないとも言われていました。前半は結構取られてしまった部分があったので、後半はゾーンディフェンスに切り替えた部分もあるんですけど、自分から体を当てて、相手を抑えて、リバウンドを取ることをしっかり徹底できたかなって思います」
「リバウンドを制する者がゲームを制する」とはよく言われることですが、後半、ディフェンスを切り替え、そのリバウンドを制したことで逆転への流れをつかみました。それもまた大阪薫英女学院がウインターカップを通して――むろん、これまでの練習で積み上げた過程があったことも含めて、ステップアップをし続けた初優勝までの過程だったというわけです。

大阪薫英女学院は今月13日・14日に東京でおこなわれた「第12回 3×3 U18日本選手権大会」でも「KUN-EI」として出場し、見事に初優勝を飾りました。三輪選手は 3 人制の優勝にも「刺激を受けた」と言っていましたが、このウインターカップ優勝で 3 人制・5 人制をともに制し、冬の高校バスケの完全制覇となりました。
2025年度のウインターカップで「悲願」を成就したのは大阪薫英女学院でしたが、桜花学園もまた、その「悲願」に手をかけるところまで勝ち上がってきました。主力選手を複数、ケガで欠くなか、掲げた「桜花一丸」でファイナルの舞台に立ったことは、あらためて称えなければなりません。
「悲願」を達成したか、しないかにかかわらず、彼女たちの人生は続きます。「悲願」のその先へ――ウインターカップが終わった今、このウインターカップを通過点にして、より大きな悲願達成にむけて、それぞれがそれぞれの道で歩みを続けていくことを期待しています。

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【女子大会最終結果】
優 勝: 大阪薫英女学院高等学校 (大阪) ※初優勝
第2位: 桜花学園高等学校 (愛知①)
第3位: 八雲学園高等学校 (東京①) / 京都精華学園高等学校 (京都①)
【女子大会ベスト5】
幡出 麗実 (はたいで・うるみ / 大阪薫英女学院 #4 3年)
三輪 美良々 (みわ・ちゅらら / 大阪薫英女学院 #5 3年)
松本 璃音 (まつもと・りお / 大阪薫英女学院 #6 2年)
濱田 ななの (はまだ・ななの / 桜花学園 #6 3年)
山田 桜来 (やまだ・さら / 桜花学園 #7 3年)
【女子連続出場表彰】
〇10年連続出場
浜松開誠館高等学校 (静岡) / 京都精華学園高等学校 (京都)
〇20年連続出場
和歌山信愛高等学校 (和歌山)