SoftBank ウインターカップ2025 第78回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑫】ハードワークは終わらない~東海大学付属相模 ジェイコブス オベッド 大~

2025年12月25日

 バスケットボールではスタッツに残らない素晴らしいプレーがいくつもあります。そのひとつが近代バスケットボールのスタンダードともいうべきピック (オンボールスクリーン) で、エースプレーヤーのディフェンスにスクリーンをヒットさせることです。そのずれは、すなわちチームのチャンスになります。そのチャンスを生かすことで、格上と思われがちなチームをも苦しませることができます。

「SoftBank ウインターカップ2025 令和 7 年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子 2 回戦、東海大学附属相模 (神奈川) は、今夏のインターハイを制した鳥取城北 (鳥取①) と対戦し、75-80 で敗れました。敗れたとはいえ、強度の高いディフェンスと、エースの高島舜弥選手――この試合で31得点――を中心としたオフェンスで鳥取城北を苦しめています。あわや、今大会の第 1 シードが 2 回戦で姿を消すのか、と思わせるほどの戦いぶりでした。

 その高島選手のシュートチャンスを幾度となく作ったのが、ジェイコブス オベッド大選手です。スクリーンだけではありません。鳥取城北にはハロルド アズカ選手と、フィリモン ホムタワ タルモン選手という 2 メートル級の留学生がいます。188センチのジェイコブス選手は、高さこそ到底敵いませんが、最大の武器であるフィジカルの強さを駆使して、徹底的にコンタクトし続けます。第 1 クォーターの開始 6 分のところで取ったタイムアウトのとき、すでに肩で息をしていましたが、それでも最後まで――40分間、コートに立ち続け、体を当て続けていました。

「自分はやっぱりインサイドのところで、鳥取城北さんよりもサイズを劣る分、体をしっかり当ててディフェンスしてこうって事前に話をしていて、そこは自分が率先してやるしかないと思っていました。ファウルしてもいいっていうくらいの気持ちで、もう後のことは考えずに、毎ディフェンス、毎ディフェンス、絶対に守るという気持ちだけで戦ってきました」

 その言葉どおり、相手のターンオーバーを誘うディフェンスをいくつも見せていましたし、むろん高さで失点する場面もいくつもありましたが、決められた直後にトランジションの先頭を走っていました。

 そこには自分自身が気持ちを切り替えようという思いもあったそうですが、それ以上にベンチメンバーの「いいよ、いいよ。切り替えよう」という言葉に後押しされたと言います。仲間の存在もジェイコブス選手がハードにプレーするのに欠かせない力になっていたというわけです。

「3 年間を通して自分が試合に出ている分、試合に出れない仲間たちがいるわけで、彼らの気持ちを考えたら、自分ができる精一杯のことをやろうっていう気持ちで、毎回の試合に臨んでいました。コートに立てないチームメートの気持ちとか、応援してくれてる人たちの気持ちが自分のプレーつながってると思いまいす」

 ジェイコブス選手がバスケットを始めたのは中学 2 年生のとき。つまり 5 年間で、チームを率いる原田政和コーチをして「チームの大黒柱」と言わしめるまでに成長したわけですが、そこには相当の努力もあったことがわかります。

「もちろん原田先生にもいろんなことを学びましたが、それ以上に自分の中で、他のプレーヤーと比べてバスケットの経歴が少ないっていうことを比較したくなくて、経歴の差で負けたくないっていう気持ちでやってきました。むしろそんなことは関係ないと思っていますし、バスケット歴が浅い分、やっぱり人一倍練習しなければいけないという気持ちでやってきました」

 バスケットボールは経験のスポーツと言われますが、一方でそれだけではないのも事実です。経験を努力で補う――その気持ちがジェイコブス選手をチームに欠かせないスクリーナーであり、ディフェンダーへと成長させていったのです。その道のりはまだ続きます。ハードワークを見初められ、春からは大学でプレーすることも決まっているそうです。

 家族のために――ジェイコブス選手の原動力は、育ててくれた家族にあると言います。そこに「一生の宝物」という高校での仲間も得て、目指すところは日本代表、AKATSUKI JAPAN です。無理だと笑う人が、あるいはいるかもしれません。しかし経歴の差をこじ開けたジェイコブス選手です。その壁もきっと力強く打ち破ってくれるでしょう。

「今はインサイドをやっているんですけど、大学ではインサイドプレーもできるアウトサイドプレーヤーを目標にやっていこうと思っています。やっぱり自分の持ち味はパワープレーなので、この体を生かしたアウトサイドプレーヤーを目標に、大学でも頑張っていきたいと思います」

 

 

 

 

 

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