【現地レポート⑨】「自分はこれだけやってきたんだから大丈夫」――2年生スコアラーの覚醒 東山・中村颯斗
2025年12月24日
「SoftBank ウインターカップ2025 令和 7 年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子 1 回戦における最注目カードと言っていいでしょう。
東山 (京都①) と中部大学第一 (愛知) による 1 回戦は死闘となりました。序盤から互い激しく体をぶつけ合うフィジカルバトルが展開され、前半を終えて 37-36 と東山がわずか 1 点のリード。
後半に入っても拮抗した展開は変わらず、中部大学第一が #8 ムアンバ ジョナサン選手のゴール下や #6 西村謙槙選手の 3 ポイントシュートで逆転。流れをつかみかけたかと思えば、今度は東山が #5 佐藤凪選手を中心に追い上げ、第 4 クォーターを前に 3 点差 (54-57) で試合が推移していました。
この時点では、試合を見る誰もが最終盤までの競り合いを予感したことでしょう。
しかし、この試合の最終スコアは 86-68 で東山。第 4 クォーターは 32-11 という思わぬ点差が付いたのです。
何が起きたのか──東山 #8 中村颯斗選手の大爆発がこのスコアリングランの最大の要因でした。

第 3 クォーター終了時点で17得点を記録していた中村選手は、最後の10分間で13得点。合計30得点の大活躍を見せたのです。特に第 4 クォーター残り 7 分36秒に決め切った自身 4 本目の 3 ポイントシュートを皮切りに、たった 1 分23秒の間に 3 本の 3 ポイントシュートを含む連続11得点。そのわずかな時間で中部大学第一は 2 つのタイムアウトを「取らざるを得ない」状況に追い込まれ、その後も点差が拡大していったのでした。
以下、中部大学第一の常田健コーチと、#9 島田康大朗選手の言葉です。
「やっぱり中村を乗せちゃダメですね。インターハイのときから分かっていんだけど…分かっていんだけど…」(常田コーチ)
「対策はしていたつもりだったんですけど、それでも決められました。もうすごくうまくて言葉が出ないというか…」(島田選手)
中村選手の最大の魅力はその爆発力であり、それがいかに相手にとって脅威であるかは 2 人の言葉を聞けば分かるでしょう。
加えて、この試合の中村選手からは、これまで以上に「自分が決めるんだ」という覚悟が感じられました。中村選手はこう振り返ります。
「インターハイでは自分のシュートの確率が全然良くなくて、あまり決め切れなかったのが本当悔しくて…。それからウインターカップに向けて本当に自主練をたくさんやってきました。だから、『自分はこれだけやってきたんだから大丈夫だ』という自信があってシュートを打てていました。そこは夏から成長した部分だと思います」

インターハイの負けを経て、特にシュートを連続して決めるメニューを取り入れ、打ち込んできたといいます。しかも、そのすべてが動きながらのより実戦に近い形のもので、かつ連続で決めなければならないプレッシャーも自らに課したのです。その成果が息詰まる接戦で披露されました。
大澤徹也コーチも中村選手の意識変化を実感している一人。彼のパフォーマンスについて、「夏に負けてから (練習への) 取り組み方がだいぶ変わりました。自覚と責任と、そういうことは常日頃から彼にも言ってきました。『お前がやらなきゃいけないよ』って。そういうところは今日の試合で見せられたんじゃないかと思います」と評価します。
今年の東山は名実ともに佐藤凪選手のチームです。しかし、中村選手が今日のようにアグレッシブに攻め立ててこそ、彼らの真の強さが発揮されます。
この試合が、中村颯斗という選手をもう一段階高みへと進化させたのかもしれない──そう思わせるような衝撃のパフォーマンスでした。