【現地レポート⑤】「自分が点を取れなくても…」チームを優先するキャプテン 福島東稜 齋藤アリンゼ陽
2025年12月23日
「まず勝てたのは良かったですが、これからどんどん勝ち進んで上に行くにつれて、自分のシュートが入らないとチームも勝てなくなると思うので、明日のシューティングの時間などでしっかりと調整してきたいです」
福島東稜 (福島) のエース #1 齋藤アリンゼ陽選手は、初戦を勝利で飾った後も険しい表情を浮かべました。
「SoftBank ウインターカップ2025 令和 7 年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子 1 回戦で、初芝橋本 (和歌山) に快勝した福島東稜。序盤からインサイドでハイペースに得点を重ね、第 1 クォーターからいきなり 35-15 の大量リードを奪います。第 2、3 クォーターもペースを握ったまま試合を進め、最終スコア 95-61 で 2 回戦進出を決めたのでした。
しかし、冒頭の言葉の通り本来エーススコアラーの齋藤選手はなかなかシュートタッチが定まらず、この試合はどちらかというと周りにパスを配給する裏方に終始。勝敗が決した最終盤で立て続けに得点し17得点を挙げたものの、次戦に向けて課題が残る初陣となりました。
齋藤選手の魅力は高いハンドリングスキルと豪快なドライブやジャンプシュート、さらにはパススキルの高さです。
特にパスに関しては福島県予選を制してから意識的に取り組んできた点。初芝橋本戦では 3 アシストというスタッツではありましたが、チームを動かすリードパスなども含めると、彼のパスがもたらした影響力はスタッツ以上のものでした。

本人も「練習試合やチーム内での練習でも、自分にディフェンスが寄ってくることがすごく多くなったので、県大会の決勝戦くらいからパスをさばく意識を持ち始めました。今日もヘルプディフェンスが結構早く寄ってきたので、フリーの味方を見付けてさばけたところは良かったです」と練習してきた成果が出たと話します。
昨年の「SoftBank ウインターカップ2024」は 2 回戦で福岡第一 (福岡) に敗れ、齋藤選手自身もわずか 3 得点にとどまりました。現チームの中で当時から主力として試合に出ていたのは齋藤選手のみ。今年はその経験も生かしつつ「全然慣れない」という人生初のキャプテンを務め、プレーでもリーダーシップでもチームを先導する立場となっています。
キャプテンについては「慣れない」とは言いながらも「コート上での声掛けはすごく増えた」と自己評価しており、この試合でパスさばきを優先したのも、「バスケは自分だけじゃなくてチームスポーツ。周りが点を取ってくれている分、今日みたいに自分が点を取れなくてもしっかり勝てる試合」だと判断したから。彼のリーダーシップが現れた判断だったと言えるでしょう。

もう一つ、試合終盤に印象的なシーンがありました。
83-53 と勝敗が決した第 4 クォーター残り 3 分 9 秒、本来であればベンチで試合終了のブザーを待ってもいい時間帯に、齋藤選手は志願してコートに戻ったのです。
「全然シュートが入っていなかったので、(次の試合に向けて)調整したいと思って出してもらいました」
昨年敗れた 2 回戦でもチームを勝たせるために──次戦の齋藤選手の爆発に期待しましょう。